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小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

ぼのすけのボツエッセイ 3

ドラマと夫婦げんかとダブルベッド

 あちゃ!またけんかしちゃった。よりによって、家族みんなで楽しみにしている、ドラマ『夫婦』の最終回直前に。
 田村正和扮する夫と、黒木瞳扮する妻。娘の結婚式を間近に控え、発覚した夫の浮気。時にはユーモアたっぷりに、時にはシリアスに、夫婦のあり方、家族のあり方を問う。
 普段は忙しく、家には寝に帰るだけの夫も、日曜日のこの時間だけは、家族一緒に見るこのドラマを楽しみにしている。
 異性が気になり始めた小5の長男も、毎回真剣に見入っている。おませな小3の長女も、どこまでわかっているのか?せつない場面では、夫の膝の上でため息をついている。おかしいのは、4才の次女だ!そんな幼い子に、大人のドラマを見せているのか?!まゆをひそめる人もあるかもしれないが、「今日は『夫婦』の日?」と指折り数えて待っているのだ。彼女だけ仲間外れにするわけにもいかない。
 昨日は、夕方からよさこいの忘年会があり、夫を除く母子4人で参加していた。
 次女がまだハイハイの赤ちゃんの頃から、地域のよさこいサークルで踊っている。年数だけはそれなりに重ねたが、踊りは一向にうまくならない。それでも、週1回子どもと踊るよさこいは、私の心と体をリフレッシュさせてくれる。
 年に1度の忘年会くらい、固いこと言わなくたっていいじゃないの!ところが、何時に終わるのかもわからず、メールしてもなかなか返事がこないことに、夫はいらついていたらしい。
 帰ってすぐ謝ればよかったのに、私も逆ギレしてしまった。
 自分は毎晩遅いくせに。飲み会の数だって半端じゃないでしょ?!こっちは子ども3人つれて参加してるのよ!いいじゃない。たまには一人で好きなことしていれば!抑えていた不満が爆発してしまった。
 ドラマが始まっても、夫婦げんかはしばらく続いた。ドラマの展開も気になるし、両親のけんかも気になる。子どもたちの顔は不安げだ。夫も私もムッとしたまま、黙ってドラマに目を移した。
 離婚を決意した妻が、「この家で一つだけ気に入らない場所がある」と言う。
 私はすぐにピンときた。寝室だ!ベッドに違いない!
 ドラマの夫婦は別々のベッドに寝ていた。我が家はダブルベッド。6年前この家を新築した時、少し照れくさかったけれど、念願のダブルベッドを購入した。
 けんかした夜、同じベッドで背を向けて寝るのは、本当にせつない。その日のうちに、ギュ―、ブチューッと仲直りできればいいが、年を取るにつれて、そう単純にもいかなくなった。
 昨日も、私が次女とお風呂に入ってる間に、夫はさっさとふて寝してしまった。夫の寝息をすぐそばで聞きながら、「さっきはごめんね」心の中でつぶやいてみる。涙がポロポロこぼれる。どうして、いつもこうなんだろう?!素直じゃないね、私。明日はきっと謝るから・・・。ベッドの中で、そう誓って目を閉じた。
 朝が来た!夫はもう起き出してコーヒーを入れている。
 我が家には廊下がない。トイレや洗面所、来客用の和室、夫婦の寝室と子どもの寝室以外は、すべてオープンスペースになっている。
 どこにいても、家族がどこで何をしているのか、気配を感じることができる。
 子どもの前ではけんかをしない、という夫婦も多いかもしれない。が、我が家ではありのままを見せている。
 相手のことを好きだから、大切に思ってるから、時にはけんかになってしまうこともあるんだよ。でも大丈夫!パパとママはちゃんと仲直りするからね。
 ドキドキしながら階段を下りて、背を向けてる夫に「おはよう」と言ってみる。夫の「おはよう」が返ってくる。続けて「昨日はごめんね」と言ってみる。夫は少しあきれながら「昨日とは別人みたいだね?!」皮肉を言う。「私のこと嫌いになった?!」と聞く頃には、「なるわけないでしょ!!」いつもの笑顔だ。
 こうして、ぎこちない朝が、ハッピーな一日へと変わっていく。
 今年もあとわずか。夫はますます忙しく、今晩もきっと遅いだろう。
 それでもカリカリせず、子どもたちと楽しく過ごそう。子どもたちに「おやすみ」も言えない気の毒な夫に、3人の様子を話してやろう。
 そして今夜は、ダブルベッドの中、背を向けないで寝れるといいな。手でもつないで。願わくば、その先も・・・。
            2004.12.20

*このエッセイは、とある公募に応募して、ボツになった(落選した)ものです。 


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